リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

「みんなで笑って転倒予防!簡単にできるラダーエクササイズ」

はじめに

ラダーエクササイズはスポーツのトレーニングに取り入れられています。複雑な動作を早く行うことにより、筋肉や関節、神経系の繋がりが強くなります。その結果、俊敏性や機敏性を高めることができます。

 素早く動くことが苦手な高齢者のエクササイズには取り入れることができないと考えてしまいますが、ゆっくり行っても効果が出るため高齢者でも行えます。さらに、楽しく大勢で行えますので介護予防事業や集団体操におすすめできます。

 

ラダーエクササイズとは?

ラダーエクササイズは、ラダーと呼ばれるはしご状の道具を床に置き、マスをステップを踏みながら進んでいくエクササイズです。ステップの種類は多くあり、腕の動きや計算問題を組み合わせるなど個人の運動機能に応じてレベルを設定できます。

 

ラダーエクササイズの効果

「65歳以上の生活機能評価で運動機能の低下に該当する23名の対象者が、週1回のラダーエクササイズを取り入れた介護予防教室を合計5回参加した結果、動的バランスの指標であるTUGの有意な改善がみられた」。※1

ステップの種類に重心を左右に移動させながら進行するものを取り入れると動的バランス機能の向上に繋がります。

・通常歩行速度の向上

「ラダートレーニングの際に、足で床やラダーを擦らないように足を引き上げて、足先の動きに注意するように指導したことが影響を及ぼしているのかもしれない」。※1

ラダーエクササイズを行うときには、ラダーを擦らないように脚を大きく上げてもらいます。そうすることにより、日常生活においても意識して脚を上げて歩くようになり、歩行速度が速くなります。

・運動に対するモチベーションの向上

ラダーエクササイズは楽しみながら行うことができるため、介護予防教室全体の雰囲気が良くなります。利用者さんからは「ラダーをやりたい」、「他のステップも教えてほしい」などの声があり、運動のモチベーション向上に繋がります。

 

ラダーエクササイズの注意点

ラダーエクササイズを楽しく安全に行うためにも、始まる前に注意点を利用者さんに伝えます。一度転倒してしまうとご本人のモチベーションだけではなく、その他の利用者さんのモチベーションも下がってしまいます。転倒による骨折リスクの話を交えると、利用者さんにしっかりと伝わります。

・ラダーに引っかからないように高く脚を上げるようにします。

・転倒リスクが高い利用者さんが行うときには後方から見守り、すぐに補助できるようにします。

・前の利用者さんとの間隔を空けるために、5マス進んだら次の利用者さんが開始するようにします。

・デュアルタスクエクササイズを行うと転倒リスクが高まりますので、デュアルタスクエクササイズを行うときには転倒リスクが高い利用者さんの見守りを強化します。

・課題を失敗してもエクササイズになることを伝え、苦手な利用者さんのモチベーションが下がらないようにします。

 

ラダーエクササイズの種類

利用者さんのレベルや時間に応じて、実施する種目を選択します。最初は基本的な種目から始め、徐々に難しい種目へとステップアップしていきます。

 

① マス目に片足ずつ入れて進みます。

ラダーの間隔を確かめてもらいます。このときにしっかりと足を上げるように伝えます。

 

② 各マスに両足入れて進みます。

1回目は右足から出してもらい、2回目は左足から出してもらいます。3回目は1マス目は右足から出し、2マス目は左足から出すようにし、交互に足を出すようにします。後から振り出す脚が上がりにくいので、しっかりと上げるように伝えます。

 

③ ななめ前に片足を出して進みます。

1歩目を右足で1マス目の横に出し、2歩目は左足で1マス目のなか、3歩目で右足を1マス目のなかに入れ両足をそろえます。2マス目は1歩目を左足で2マス目の横に出し、2歩目は右足で2マス目のなか、3歩目で左足を2マス目のなかに入れ両足をそろえます。外・中・中、外・中・中の順番に左右交互に足を出していきます。

日常生活でふらついてもすぐに足を出して身体を支えて転倒を予防できるように、外に出す足で身体をしっかりと支えるように伝えます。

 

④ サイドステップにて進みます。

1回目は右足から横に出していき、2回目は左足から横に出していきます。

③と同じようにふらついてもすぐに足を出して身体を支えて転倒を予防できるよう、横に出す足で身体をしっかりと支えるように伝えます。

 

⑤ 2マス進んだら1マス後方へ戻ります。

②と同じように両足をそろえながら2マス進んだら、1マス後方へ後ろ向きに戻ります。1回目は右足から行い、2回目は左足から行います。転倒リスクが高まりますので見守りを強化しますが、利用者さんの状況に応じて実施の可否を決定します。

後方へのステッピング戦略を意識してもらいます。

 

⑥ 手拍子を入れながら進みます。

①と同じように進みながら、偶数のマス目で手拍子をします。2回目は3の倍数で手拍子をします。

手拍子を意識してしまうと足が上がらなくなりますので、足も意識して上げるように伝えます。

 

⑦ 肩・頭・肩(クロス)・手拍子の順に手を動かしながら進みます。

①と同じように進みながら、1マス目は右手で右肩、左手で左肩をタッチ、2マス目は両手で頭をタッチ、3マス目は胸の前でクロスするように右手で左肩、左手で右肩をタッチ、4マス目は手拍子します。1~4を繰り返しながら進んでいきます。

手の動きに集中してしまい、つまづきによる転倒リスクが高まります。見守りを強化してリスク管理をします。

 

⑧ お題を出して声に出しながら進みます。

①と同じように進みながら、1マスずつ声を出しながらお題に答えます。例えば「都道府県を言いながら進みましょう」というお題の場合、1マス目で東京都、2マス目で神奈川県、3マス目で静岡県、4マス目で愛知県というように答えながら進みます。

お題に答えることに集中してしまうと足が上がらなくなりますので、足を上げるように伝えます。また、お題が言えず足が止まってしまうことがあり、後ろの利用者さんとぶつかってしまう危険性があります。利用者さん同士の間隔を空けるようにスタートのタイミングを指導員が管理します。

例題)新幹線の停車駅、国の名前、野菜の名前、利用者さんの名前(利用者さんがマス目の数より多く、介護予防教室の期間が長い場合は行います)など。

 

ラダーエクササイズをおすすめできる最大の理由

『ラダーエクササイズの効果』にて運動効果をお伝えしましたが、おすすめできる最大の理由は、大勢で楽しむことができることです。利用者さんからは「つまづいても足で支えることができた」、「歩くときに足が上がるようになった」などの声がありますが、一番多いのは「楽しい」という声です。楽しみながら行うことにより運動に対するモチベーション向上に繋がるだけではなく、教室に継続して通ってもらえるようになります。教室に継続して参加することにより運動効果を出すだけではなく、これからの介護予防に求められている閉じこもりの予防や社会参加に繋がります。

ラダーエクササイズを取り入れた介護予防教室は利用者さんから多くの好評の声をいただいています。ぜひ皆様の集団体操や介護予防教室に取り入れてみてください。

 

 

参考文献

※1『ラダートレーニングを用いた健康教室が高齢者の運動器の機能向上に及ぼす影響について』 吉村他 第60巻第3号「厚生の指標」 2013年