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「すぐにできる!3種の筋トレでサルコペニア予防」

はじめに

 サルコペニアは、高齢化が急速に進行している日本では要介護状態になる原因の一つとして注目されています。平均寿命だけではなく、健康寿命を延ばすためにもサルコペニアを予防することはとても重要となります。

 今回は、サルコペニアの概要とすぐに実施できる3種類の筋力トレーニングを紹介いたします。

 

サルコペニアとは?

 サルコペニアという用語は、1989年にRosenbergによって提唱された、ギリシャ語で筋肉を表す「sarx(sarco:サルコ)」と喪失を表す「penia(ぺニア)」を合わせた造語です。

 サルコペニアとは、加齢や生活習慣などの影響によって筋肉量が減少することで、握力や下肢筋力など全身の筋力低下が起こること、歩行速度が低下するなどの身体機能の低下が起こることを指します。

 

サルコペニアの分類

 サルコペニアは「一次性サルコペニア」、「二次性サルコペニア」に分類されます。

①一次性サルコペニア

 疾患や栄養に問題がなく、加齢以外に明らかな原因がないものです。

②二次性サルコペニア

 寝たきりや不活発な生活状態などの活動に関連するもの、炎症疾患や悪性腫瘍などの疾患に関連するもの、栄養の吸収不良、消化器疾患や薬の副作用による食欲不振、エネルギー・タンパク質の摂取不足による栄養に関するものです。

 

サルコペニアの診断

 診断基準はヨーロッパ、アメリカ、アジアなど様々な基準が制定されています。しかし、ヨーロッパやアメリカの診断基準では高齢者の体格や生活習慣に違いがあります。そこで、日本人に合った診断基準を国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究が作成していますので、こちらを紹介いたします。

〇65歳以上男女

〇通常歩行速度1m/秒未満、もしくは握力が男性25㎏未満、女性20㎏未満

〇BMI18.5未満、もしくは下腿周囲が30㎝未満

 以上の条件に当てはまった場合にサルコペニアと診断されます。

 歩行速度、握力が基準値以上であった場合は正常です。歩行速度、握力が基準値以下でもBMI、下腿周囲が基準値以上であれば虚弱高齢者となりますがサルコペニアではないと診断されます。

 

サルコペニアの要因

 サルコペニアには多くの要因が関与しています。以下に関与していると考えられている要因を挙げます。

〇身体活動の低下

〇栄養(タンパク質)不足

〇筋たんぱく質同化抵抗性

〇骨格筋幹細胞(衛星細胞)の減少・活性化不全

〇神経・筋接合不全

〇酸化ストレス

〇炎症(TNF-α、IL-6↑)

〇ホルモン(GH、IGF-1、DHEA)↓

〇インスリン抵抗性

〇ミトコンドリア機能低下

〇アポトーシス

〇ビタミンD↓、副甲状腺ホルモン↑

〇筋肉血流↓

〇未知の液性因子

 

予防のための簡単にできる3種の筋トレを紹介

 サルコペニアを予防するためにはレジスタンストレーニングが必要です。今回は自宅ですぐにできる3種の筋トレを紹介します。3種類の筋トレに共通しているのは、下肢の筋トレであることと歩行に関連する筋トレであることです。サルコペニアは筋肉量の減少や歩行機能の低下が原因になっていますので、身体の70~80%を占める下肢の筋肉や歩行に関連する筋肉を鍛えることが重要になります。

 実施回数は利用者さんの身体状況により異なりますが、継続して行ってもらうことがポイントになりますので無理のないように注意します。

スクワット

〇スクワットで主に鍛えられる筋肉

大腿四頭筋、ハムストリングス、大殿筋、腓腹筋、脊柱起立筋です。これらの筋肉は身体のなかでも大きい筋肉です。

〇方法

①両足を肩幅に開き、膝とつま先を正面に向けます。

足幅で作用する筋肉が違いますが、高齢者を対象にするときには肩幅に開いた方法が行いやすいです。膝やつま先が内側に向いてしまうと、膝を痛めてしまう原因になります。

②膝から曲げず、臀部から下へ下ろし椅子に座るように身体を落としていきます。

膝から曲げるように行うと、膝がつま先より前に出やすいです。膝がつま先より前に出ると膝を痛める原因になります。背中が丸くならないことも注意します。

③大腿と床が平行になるくらいまで身体を落とします。

負荷がかかり過ぎていたり、膝が痛む場合は角度を浅くしましょう。

④ゆっくりと①の姿勢に戻り、10回繰り返します。

ゆっくり戻ると、しっかりと筋肉に負荷がかかります。3秒かけて身体を落とし、3秒かけて身体を戻すようにします。

 スクワットは正しい姿勢で行うと効果的なトレーニングになりますが、姿勢が崩れてしまうと効果が低くなったり、身体を痛めてしまいます。高齢者の集団体操で行う場合は、慣れるまではスクワットを行う前に椅子からの立ち座りを繰り返し行うと正しい姿勢が身に付きます。

片足立ち

〇片足立ちで鍛えられる筋肉

 中殿筋が主に鍛えられます。またつま先に重心をかけることにより、足趾の筋肉も鍛えることができます。

〇方法

①足を腰幅に開き、壁か椅子の背もたれを持ちます。

転倒の危険性があるため、必ず支持物を用意します。しかし、支持物に頼り過ぎてしまうと効果が低くなりますので、少し支える程度にします。

②片足をゆっくりと上げます。

足を高く上げ過ぎてしまうと姿勢が崩れやすくなるので床から5~10㎝くらい浮かすようにします。

③60秒間キープし、足を下ろします。

身体が傾いてしまうと中殿筋が作用しにくいので身体はまっすぐにします。軸足のつま先に力をいれて行います。

 支持物を使用しない方が効果は出ますが、様々な身体能力の利用者さんが参加する集団体操では、転倒リスクを考えて必ず支持物を使用するようにします。

踵上げ

〇踵上げで鍛えられる筋肉

 下腿三頭筋が主に鍛えられます。つま先の方までしっかりと上げると、足趾の筋肉も鍛えられます。

〇方法

①足を肩幅に開き、壁か椅子の背もたれを持ちます。

踵を上げたときにふらついてしまうことが多いので支持物を用意します。

②踵をゆっくりと上げます。

母趾と示趾の間に体重をかけるように行うと、効率的に鍛えることができます。身体が前に傾いてしまわないように、頭を上に上げるように意識してもらいます。

③ゆっくりと踵を下ろし、10回繰り返します。

3秒かけて上げて3秒かけて下ろします。ゆっくり下ろし、効果的に筋肉を鍛えます。

 踵上げを行っても負荷がかからず物足りないと言う利用者さんがいますが、多くの場合は身体を前に傾けて踵を上げている場合が多いです。身体を前に傾けないように意識してもらうと効果的に踵上げが行えます。

 

予防は運動だけでは不十分?

 3種のレジスタンストレーニングを紹介しましたが、運動だけでサルコペニアを予防することは難しいです。もちろん運動をすることは重要ですが、サルコペニアの要因に栄養不足やたんぱく質の不足があったように、栄養面からのアプローチも求められます。特に運動を行うためのエネルギー(炭水化物)と筋肉を作るたんぱく質を摂る必要があります。

 サルコペニアを予防するには一時的な対応ではなく、習慣的に継続して行う必要があります。継続して運動を行ってもらうためにも、効果のある運動を提供し、運動効果を実感してもらいましょう。

 

参考文献

1.公益社団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp