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「肘の筋トレはこうやる!肘のケガを予防するトレーニング方法」

はじめに

野球やテニスを始めボールを投げたり打ったりするスポーツはたくさんあり、他のスポーツ競技に比べると、肘や肩を中心として腕にかかる負担が大きいぶん肘のケガが多く発生します。

またスポーツに関わらず、日常生活内でも重たい荷物を持つことや長時間パソコン作業をすることなどちょっとした動作の繰り返しが肘の負担になり、ケガにつながることがあります。

今回は、肘関節の構造をご説明するとともに肘関節に関与するケガについて症状や治療法と予防するトレーニングをご紹介します。

 

 

肘関節の構造

■骨構造

肘関節は上腕と前腕をつなぐ関節です。

上腕は「上腕骨」が軸となっており、前腕は「橈骨」と「尺骨」という平行に並んだ2本の骨が軸になっています。

一般的に言われている肘関節は上腕骨と尺骨で形成される関節で、「腕尺関節」と呼ばれる

曲げ伸ばしの動きのみが可能な関節です。

 

■肘関節周囲の筋肉

肘周囲にはたくさんの筋肉が付着しており、それぞれ異なる作用を持っています。

 

肘を曲げるために主に働いている「上腕二頭筋」は上腕の前面にあり力こぶを作る筋肉です。

肩甲骨の肩関節面上部から始まり、上腕前面を上から下に向かって走行し、橈骨近位の橈骨粗面という部位に付着しています。

肘を曲げる働きのほかに、肩関節の屈曲(バンザイの動き)にも作用します。

 

肘を伸ばすために主に働いている「上腕三頭筋」は上腕の背面にある筋肉です。

肩甲骨の肩関節面下部から始まり、上腕背側を上から下に向かって走行し、尺骨の肘頭(肘をつくときに触れる骨の隆起)に付着しています。

肘を伸ばす働きのほかに、肩関節の伸展(後ろに腕を引く動き)にも作用します。

 

また、肘関節には手首を動かす筋肉も多く付着しています。

 

手首を反らしたり、手指を伸ばしたりする筋肉をまとめて「前腕伸筋群」と呼びます。

前腕伸筋群は上腕骨の外側上顆(上腕骨の外側遠位で皮膚上から触れられる隆起)から始まり、それぞれ手首や手指の背側(甲側)に向かって走行しています。

 

手首を曲げたり、手指を曲げたりする筋肉をまとめて「前腕屈筋群」と呼びます。

前腕屈筋群は上腕骨の内側上顆(上腕骨の内側遠位で皮膚上から触れられる隆起)から始まり、それぞれ手首や手指の掌側に向かって走行しています。

 

前腕伸筋群や屈筋群は上腕二頭筋や上腕三頭筋に比べると肘の動きに対する関与は低いですが、いずれも肘関節をまたいで走行しています。

 

■肘関節周囲の靭帯

関節の周りには、筋肉の他に関節が脱臼したりしないように制動するための靭帯という組織があります。

筋組織は伸張性が高いのに比べて靭帯組織は伸張性が低いため、関節捻挫をすると靭帯が切れるなど損傷することがあります。

 

肘関節にも靭帯があり、肘の曲げ伸ばしに対して横の動きである内外反の動きを制動する働きをしています。

 

肘関節の内側にあるのが「内側側副靭帯」で上腕骨内側遠位と尺骨内側近位をつないでいます。

主に肘関節の外反(肘内側が引きのばされるような動き)を制御しています。

 

肘関節の外側にあるのが「外側側副靭帯」で上腕骨外側遠位と橈骨外側近位をつないでいます。

主に肘関節の内反(肘外側が引きのばされるような動き)を制御しています。

 

肘関節の主なケガ

肘関節周囲の主なケガについてご紹介します。

 

■内側側副靭帯損傷

「内側側副靭帯損傷」は、肘に対する外反ストレスによって肘内側にある側副靭帯が引きのばされて損傷した状態を言います。

転んで手をついたり、スポーツ競技中に不慮の事故で肘を引っ張られるような負荷がかかった時に損傷することが多いですが、野球などの投てき種目で肘への外反ストレスが積み重なって徐々に傷める場合もあります。

受傷すると肘関節の内側に腫脹や熱感といった炎症所見が見られたり、肘の曲げ伸ばし動作による痛みが伴います。

程度の軽いものであれば、一定期間ギプスなどで固定する保存療法が選択されますが、不安定性が強かったり、スポーツ競技などで今後も外反ストレスが引き続きかかることが想定される場合は手術を行い、靭帯を縫合したり再建する場合もあります。

 

■外側側副靭帯損傷

「外側側副靭帯損傷」は、肘に対する内反ストレスによって肘外側にある側副靭帯が引きのばされて損傷した状態を言います。

内側側副靭帯同様、転倒して手をついたときやスポーツ競技中に不慮の事故で受傷することが多いですが、内側側副靭帯に比べると損傷する頻度は少ないです。

 

■上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

「上腕骨外側上顆炎」は「テニス肘」とも呼ばれる外傷で、テニスなどのスポーツ競技者とともにパソコン作業や書き物を多くする方にも発症する外傷です。

テニス中にバックハンドでボールを打ち返す際、ラケットを握った状態で手首を背屈(反らす動き)させ、前腕伸筋群が伸張した肢位で強く収縮するため、前腕伸筋群の起始部である上腕骨外側上顆には牽引ストレスがかかります。

その繰り返しによって、上腕骨外側上顆に炎症が起き、腫脹や熱感、運動時痛が生じます。

 

また、パソコン操作や書字などの動作はテニスの上記したような負担を考えると一回にかかる負担はかなり小さいですが、指の細かい操作を何百回と繰り返し行うことやペンを握り続けることを習慣的に続けると、前腕伸筋群の疲労が蓄積してテニス肘と同じように上腕骨外側上顆に負担がかかり炎症を起こしてしまいます。

 

上腕骨外側上顆炎になった場合まず必要なのは炎症を鎮静化させることなので、アイシング(氷を使って患部を冷やすこと)や湿布貼付、症状が強い場合には炎症鎮痛剤の服薬を行います。

また、このケガはいずれも同じストレスの蓄積で慢性的に発症することが多いので、原因となった動作を控えることで上腕骨外側上顆へのストレス軽減と前腕伸筋群の休息を図ることが重要です。

 

■上腕骨内側上顆炎(野球肘)

「上腕骨内側上顆炎」は「野球肘」とも呼ばれる外傷で、野球などの投動作が多いスポーツの競技者のほかに調理師や肉体労働者など日常的に重たいものを持つ機会の多い方に発症します。

野球の投動作ではボールを持って大きく腕を後ろに引く際、身体は前方に踏み込みながら腕を後ろに引くので肘の内側が引きのばされます。

その状態から強くボールを握って前方に腕を振り下ろすため、前腕屈筋群は強く収縮し、その起始部である上腕骨内側上顆には大きな牽引ストレスがかかります。

未成年で筋力が未発達であったり投動作の繰り返しが多くオーバーワークになると、上腕骨内側上顆が炎症を起こし、腫脹や熱感、運動時痛が生じてしまいます。

 

重たいフライパンなどを頻繁に長時間持つ調理師や肉体労働者においても、一回の負荷は野球の投動作ほどではないにしろ、前腕屈筋群に負荷をかけることが多いため、上腕骨内側上顆炎を発症することがあります。

 

炎症を起こした部位は異なりますが、治療の原理は前に述べた上腕骨外側上顆炎と同じですので、消炎鎮痛処置とストレスの軽減を優先して行うことになります。

 

肘関節のケガを予防するトレーニング

前に述べた様々な肘のケガは、関与する筋肉を鍛えることによって予防することができますので、その方法をご紹介します。

主にダンベルを使ったトレーニングをご紹介しますが、ダンベルの重さは10~15回程度トレーニングが行える重さをご自身で選択してください。

重すぎるとフォームが崩れてケガの原因になってしまい、軽すぎると筋力増強トレーニングの意味をなさなくなってしまうので、適度な重さを選択することが重要です。

 

■上腕二頭筋トレーニング

上腕二頭筋は肘の屈曲(曲げる動作)の主動作筋になるため、肘の屈曲に負荷をかけてトレーニングを行います。

 

1. 肘を台の上に肘を乗せて固定します(台の高さは腕を体側につけたときの肩から肘の間の高さとします)。
2. 掌を上向きにしたらダンベルを軽く握り、肘の曲げ伸ばし動作をゆっくり行います。
 

■上腕三頭筋トレーニング

上腕三頭筋は肘の伸展(伸ばす動作)の主動作筋になるため、肘の伸展に負荷をかけてトレーニングを行います。

 

1. 立位または椅子座位で姿勢を伸ばし、片手をバンザイした状態でダンベルを持ちます。
2. ダンベルを持った方の肩と肘の位置が変わらないように気をつけながら、肘をゆっくりと曲げて頭の後ろにダンベルを持っていきます。
3. 曲げたときと同じルートでゆっくりと肘を伸ばしてダンベルを持ち上げてはまた曲げる動作を繰り返します。
 

上腕二頭筋と上腕三頭筋の単独トレーニングをご紹介しましたが、道具なしで自重のみでどちらも同時に鍛えられる方法としては腕立て伏せが効果的です。

筋力不足で床に手とつま先をついて行うのが難しい場合は、つま先ではなく膝をついて行ったり、床ではなく壁や台の上に手をついて身体の傾斜を起こしたりすることで負荷を調整することができますので少年期の方や女性でも行うことができます。

 

■前腕屈筋群トレーニング

手首の屈曲(曲げる動作)に負荷をかけてトレーニングを行います。

 

1. 台の上に肘から手首を乗せるようにし、手のひらを上向きにしてダンベルを持ちます。
2. 肘の動きや前腕の回内外(回転)が伴わないように気をつけながら手首を起こしては戻す動きを繰り返します。
 

■前腕伸筋群トレーニング

手首の背屈(反らす動作)に負荷をかけてトレーニングを行います。

 

1. 台の上に肘から手首を乗せるようにし、手の甲を上向きにしてダンベルを持ちます。
2. 肘の動きや前腕の回内外(回転)が伴わないように気をつけながら手首を起こしては戻す動きを繰り返します。
 

前腕の屈筋、伸筋はトレーニングのやりすぎによっても上腕骨外側上顆炎や内側上顆炎になってしまう場合がありますので、トレーニング量や負荷量には注意が必要です。

また、トレーニングによって使った筋肉をストレッチやマッサージによってケアすることによって疲労の蓄積を防ぎ、柔軟な筋肉を維持することができるため、ケガの予防にもつながります。

 

おわりに

今回は、肘関節に関与するケガとその予防のためのトレーニングについてご説明しました。

上半身は下半身に比べるとケガの頻度も低く、トレーニングについても下半身がメインになりがちですが、ケガなく良い状態でスポーツ競技を行ったり日常生活を送るためにはトレーニングやケアが欠かせません。

関節の構造や筋肉の働きを理解して、ご自身の身体と上手く付き合っていただければと思います。