リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

リハビリテーションにおける外出訓練

はじめに

リハビリテーション(以下 リハビリ)は、心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として、単なる機能回復訓練ではなく、潜在する能力を最大限に発揮させ、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促すものです。そのため、買い物や交通手段の利用といった居宅外における課題に対しては、外出訓練の実施が必要となります。
 医療機関や介護保険施設でのリハビリ、また訪問リハビリにおいても、必要に応じて外出訓練を行っています。
今回は、外出訓練を行う際の注意点や、制度上の要件について解説します。

 

 

外出訓練を行う意義

 リハビリの対象者の目標と課題を設定した際、自宅内や施設内のプログラムだけでは不十分で、屋外でのプログラムが必要な場合は、外出訓練を行います。
 多くの施設では、バリアフリーで廊下も広く手すりも設置されており、安全に歩行できる環境となっています。しかし、地域に出れば、安全で歩きやすい場所だけではありません。外を歩いていると、すぐ横を自転車が追い抜くかもしれません。また、人混みの中を歩いている時、ふいに正面や横から人が出てきて、とっさに避けなければいけない場面もあるでしょう。また、屋外には、砂利道や石段、坂道、手すりのない段差、傾斜のついている歩道など、様々な環境があります。外出訓練では、施設内で経験できない環境下で、地域における社会参加を意識し、生活場面を想定したリハビリを行うことができます。
 また、高次能機能障害のある方、IADL能力の低下している方などを対象に、買い物やATMの使用、エレベーターやエスカレーターの使用、電車やバスなどの交通手段を利用した訓練を行うことも効果的です。外出訓練は、地域で社会参加を行う能力があるか評価する機会にもなります。

 

外出訓練を行う際の注意点

 外出訓練を行う際には、リスク管理を徹底します。外出訓練を行う大前提として、医師からの指示が必要です。医師から、事前に中止基準の有無やリスクについて事前に指示を受けましょう。外出訓練時の安全管理マニュアルを作成し、実施手順や緊急時の対応を詳細に決めておきましょう。施設内で事故があった場合は、多職種、複数のスタッフで対応することが可能ですが、外出時に事故があった場合は、セラピスト一人で対応しなければいけないこともあります。事故が起こった場合、冷静に適切な対応がとれるよう、日頃よりリスク管理を意識しておくことが大切です。
 通常の施設内、屋内リハビリを行う際ももちろん必要ですが、外出訓練を行う際には、特に綿密に対象者のバイタルチェック、疼痛、体調の変化を把握します。また、気温が非常に高い日や低い日、大雨の日などは、体調変化が起こりやすいので注意しましょう。

 

外出訓練を行う際の制度

 外出訓練などの、医療機関外におけるリハビリの実施には、社会復帰等に向けたリハビリの実施を促すため、IADL(手段的日常生活活動)や社会生活における活動の能力の獲得のために、実際の状況における訓練を行うことが必要な場合に限り、行ってよいと定められています。単に外出機会をつくり、一緒にお散歩して活動量を増やすためだけに、医療機関の敷地を離れて外出訓練を行っていた方は、外出訓練の目的を見直しましょう。

また、外出訓練の前後で、訓練場所との往復に要した時間は、リハビリの実施時間に含まれないので注意が必要です。訓練を行うまでに往復時間を含め、実際には、数時間を要したとしても、算定できるのは1日に3単位(1時間)までと定められています。
 また、訪問看護ステーションからの理学療法等の派遣は、在宅で、居宅に限られており、外出訓練は認められていませんので注意が必要です。

外出訓練を診療報酬で算定するには、以下のように要件が定められています1)。
[算定要件]
(1) 当該保険医療機関に入院中の患者に対する訓練であること。
(2) 各疾患別リハビリテーションの(Ⅰ)を算定するものであること。
(3) 以下の訓練のいずれかであること。
 ① 移動の手段の獲得を目的として、道路の横断、エレベーター、エスカレータ
  ーの利用、券売機、改札機の利用、バス、電車、乗用車等への乗降、自動車
  の運転等、患者が実際に利用する移動手段を用いた訓練を行うもの。
 ② 特殊な器具、設備を用いた作業(旋盤作業等)を行う職業への復職の準備が
  必要な患者に対し、当該器具、設備等を用いた訓練であって当該保険医療機
  関内で実施できないものを行うもの。
 ③ 家事能力の獲得が必要である患者に対し、店舗における日用品の買い物、居
  宅における掃除、調理、洗濯等、実際の場面で家事を実施する訓練(訓練室
  の設備ではなく居宅の設備を用いた訓練を必要とする特段の理由がある場合
  に限る。)の訓練を行うもの。
(4) 専ら当該保険医療機関の従事者が訓練を行うものであり、訓練の実施について保険外の患者負担(公共交通機関の運賃を除く。)が発生しないものであること。

※実施にあたっては、訓練を行う場所への往復を含め、常時従事者が付添い必要に応じて速やかに当該保険医療機関に連絡、搬送できる体制を確保する等、安全性に十分配慮していること。

 

さいごに

 訓練室や施設内でできていたことも、退院後、自宅や地域社会では思うようにできなかったというケースをよく耳にします。対象者が自信をもって退院し、スムーズに社会参加できるようにするために、外出訓練は大切な訓練です。
 これまで漫然と行っていた方は、しっかりと目的をもち、安全面にも十分配慮して行うよう、今一度、外出訓練を見直してみましょう。


 

 

 

 

1)中央社会保険医療協議会 診療報酬改定結果検証部会(第53回) 議事次第 参考資料より(平成29年6月28日)http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000169032.html