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バランス評価 量的な評価の中でいかに質的評価を行うか!?

バランスの評価を行う時に皆さんはどのような評価を行っているでしょうか。例えば、片脚立位が右が10秒、左が7秒だ。TUGが27秒だったなどでしょうか。数値の変化だけ追っているとなぜ、その数値が変化したのか、なぜその値だったのかということをとらえるのは難しいと思います。そして、結果を実際のプログラムに落とし込んでいく、評価から治療への展開が難しいのではないでしょうか。

そこで、今回は包括的なバランス評価尺度であるBerg Barance Scale(BBS以下)を用いて、その評価の中で、量的に点数を出す際に質的な部分ではどんな評価していくのか考えてみたいと思います。

 

【BBSの概要】

まず、BBSとはどんな評価であるのか確認していきたいと思います。

・座位、立位での静的姿勢保持と動的バランスなど臨床的により用いられる項目を評価している。

・14項目あり、課題達成度、実施時間から各5段階で評価する。

・パフォーマンステストであるため、治療の効果判定や経時的変化を追うことに適している。

・各項目の評価結果からバランス能力の低下した動作の特徴や共通項を探索することで、必要とされる訓練を考えていく。

・得点は全14項目とも0点(重度)~56点(良好)であり、点数が高いほどバランス能力が高い。

 

【BBSの各評価項目とそれに関しての質的見方】

・椅子座位、起立、立位で行う項目

2分間安全に立位保持ができれば座位保持の項目は4点とし、着座の項目に進む

 

1) 椅子からの立ち上がり

指示:手を使わずに立ってください

4:立ち上がり可能 3:手を使用して一人で立ち上がり可能 2:数回の施行後、手を使用して立ち上がり可能 1:立ち上がり、または安定のために最小の介助が必要 0:立ち上がりに中等度ないし高度の介助が必要

 

[観察のポイント]

起立を分析する際に、気にしてみていかなければいけないことは、まず、座っていられるのか、体幹を前傾し両足部に体重を移し立てるのかということです。起立の際に、どこに力を入れて起立しているのか、右手を右足に寄って起立しようとしているのか等も重要です。また、起立にかかる時間も重要です。1人で立てたとしてもかなり努力的であればなぜなのか分析しなければいけません。

 

2) 立位保持

指示:つかまらずに2分間立ってください

4:安全に2分間立位保持が可能 3:監視下で2分間立位保持が可能 2:30秒間立位保持が可能 1:数回の試行にて30秒間立位保持が可能 0:介助なしには30秒間の立位保持不能

 

[観察のポイント]

ここでは、歩隔を指定していないので、どのくらいの足の幅で立っているのか確認することが大切です。理想は腰幅くらいで前後左右均等に立っていることです。あらかじめ、腰幅くらいの足の幅で立って下さいと基準を作っても良いかもしれません。次に、立位で立っている際の身体の揺れ具合です。誰もが呼吸や心臓の動き、そしてバランスを取るためにわずかに立位で揺れています。それが過剰に動いている人もいるのでそこを確認します。

 

3) 座位保持(両足を床に着け、もたれずに座る)

4:安全に2分間の座位保持が可能 3:監視下で2分間の座位保持が可能 2:30秒間の座位保持が可能

1:10秒間の座位保持が可能 0:介助なしには10秒間の座位保持不能

 

[観察のポイント]

座位保持を評価する項目です。まずは、座位保持できるのか、どんな姿勢で座っているのかを確認します。体幹を起こし座っていられるか、円背位になってしまうのか。左右に座り方は崩れていないかも確認していきます。

 

4) 着座

指示:座って下さい

4:ほとんど手を用いずに安全に座れる 3:手を用いてしゃがみ込みを制御する 2:下腿後面を椅子に押し付けてしゃがみ込みを制御する 1:一人で座れるがしゃがみ込みを制御できない 0:座るのに介助が必要

 

[観察のポイント]

ここは、起立や立位の項目と一緒に評価する項目です。着座だけ再度確認するようでは、二度手間です。理想的には、膝をリリースし、臀部を後ろに下げ、体幹が伸展を保ちながら前傾し座ってくることが良いです。その際、膝折れがみられたり、椅子に下腿後面を押し付けたり、臀部から勢いよく座ったりしないかが確認するポイントです。また、着座時に両足部が浮いたり、つま先が浮いたりしないか確認必要です。過度に足部を床に押し付けて回旋など入らないかも確認していくポイントです。

 

5) 移乗

指示:車椅子からベッドに移り、また車椅子へ戻ってください。まず、肘掛けを使用して座り、次に肘掛けを使用しないで移ってください。

4:ほとんど手を用いずに安全に移乗が可能 3:手を用いれば安全に移乗が可能 2:言語指示あるいは監視下にて移乗が可能 1:移乗に介助者1名必要 0:安全確保のために2名の介助が必要

 

[観察のポイント]

ここは、これまでの起立、立位、着座でどのくらいできるか予想を建てておきます。中腰でも移乗は可能なので、起立が途中までしかできなくとも、柵などに掴まれば移乗が1人で可能な場合もあります。移乗では、往復の動作を見なければ行けないため、一側に麻痺があると往路と復路で動作が異なるのでしっかり評価を行うと良いです。

 

6) 閉眼立位保持

指示:目を閉じて10秒間立ってください

4:安全に10秒間、閉眼立位保持可能 3:監視下にて10秒間、閉眼立位保持可能 2:3秒間の閉眼立位保持可能 1:3秒間閉眼立位保持できないが、安定し立っていられる 0:転倒を防ぐための介助が必要

 

[観察のポイント]

ここは、立位が取れることが前提となってきます。感覚障害や運動失調、高齢者など視覚情報で立位バランスを代償していることも多いので、閉眼すると立位での揺れが増幅します。安全管理に配慮し、開眼での立位と比較していきます。

 

7) 閉脚立位保持

指示:足を閉じてつかまらずに立っていてください

4:自分で閉脚立位ができ、1分間安全に立位保持が可能 3:自分で閉脚立位ができ、監視下にて1分間立位保持可能 2:自分で閉脚立位ができるが、30秒間の立位保持不能 1:閉脚立位を取るのに介助が必要だが、閉脚で15秒間立位保持可能 0:閉脚を取るのに介助が必要で、15秒間保持不能

 

[観察のポイント]

支持基底面が狭い中で立位が保てるのか、両足部の内側同士がしっかりくっついて立っているか確認します。前後左右への揺れが増幅するかなど確認します。

 

 

 

 

 

・立位で行う応用的な項目

以下の項目は支持せずに立った状態で実施する

 

8) 上肢前方到達

指示:上肢を90°屈曲し、指を伸ばして前方へできる限り手を伸ばして下さい(検者は被験者が手を90°屈曲させた時に指の先端に定規を当てる。手を伸ばしている間は定規に触れないようにする。被験者がもっとも前方に傾いた位置で指先が届いた距離を記録する)

4:25㎝以上前方到達可能 3:12.5㎝以上前方到達可能 2:5㎝以上前方到達可能 1:手を伸ばせるが、監視が必要 0:転倒を防ぐための介助が必要

 

[観察のポイント]

ここでは、前方リーチという動的なバランスを確認します。リーチの際の体幹が捻じれているか、視線はどこを向いているか、足部はどうなっているか確認します。また、リーチした後にどのように立位に戻るかもポイントです。バランスを崩すのか、円滑に戻れるのかなどです。体幹機能も大切ですが、前方にリーチした際に両下肢、特に足部で踏ん張れているのかが重要です。

 

9) 床から物を拾う

指示:足の前にある靴を拾ってください

4:安全かつ簡単に靴を拾うことが可能 3:監視下にて靴を拾うことが可能 2:拾えないが靴まで2.5~5㎝くらいの所まで手を伸ばすことができ、自分で安定を保持できる

 

[観察のポイント]

ここで大切なことは、立位が保て、重心を落とし、そして立位に戻ってこれるか上下の重心移動の確認です。重心を下げながら対象物に近づくか、膝を突っ張ったまま腰を落とすのか、膝に手を着きながら拾うのかなど観察できると思います。

 

10)左右の肩越しに後ろを振り向く

指示:左肩越しに後ろを振り向き、次に右を振り向いて下さい

4:両側から後ろを振り向くことができ、体重移動が良好である 3:片側のみ振り向くことができ、他方は体重移動が少ない 2:側方までしか振り向けないが安定している 1:振り向く時に監視が必要 0:転倒を防ぐための介助が必要

 

[観察のポイント]

立位で体幹を回旋した際の重心移動を見ています。運動麻痺や感覚障害があり、一側に重心が移しにくかったりすると左右差がでてきます。また、体幹の固さなども影響するため可動域も確認しておきます。

 

11)360°回転

指示:完全に1周回転し、止まって、反対側に回転してください

4:それぞれの方向に4秒以内で安全に360°回転が可能 3:一側のみ4秒以内で安全に360°回転が可能 2:360°回転が可能だが、両側とも4秒以上かかる 1:近位監視、または言語指示が必要 0:回転中介助が必要

 

[観察のポイント]

この動作も、運動麻痺や感覚障害、痛みなど一側に何らかの障害があると左右差が出てきます。失調症状などがあり、ワイドベースでゆっくり動作を行う場合などもあるので、基礎疾患を確認しながら分析します。

 

12)段差踏み換え

指示:台上に交互に足を乗せ、各足を4回ずつ台に乗せて下さい

4:支持なしで安全かつ20秒以内に8回踏み換えが可能 3:支持なしで8回踏み換えが可能だが、20秒以上かかる 2:監視下で補助具を使用せず4回の踏み換えが可能 1:最小限の介助で2回以上の踏み換えが可能 0:転倒を防ぐための介助が必要、または施行困難

 

[観察のポイント]

この項目は、より応用的なバランスを評価しています。片脚立位に近い状況です。1側で支持が可能なのか、そして足を台までステップできるのかもポイントになってきます。乗せた後すぐに下せるか、動作の切り替えも評価しています。

 

13)片足を前に出して立位保持

指示:片足を他方の足のすぐ前にまっすぐ出して下さい。困難であれば前の足を後ろの足から十分離して下さい

4:自分で継ぎ足位をとり、30秒間保持可能 3:自分で足を他方の足の前に置くことができ、30秒間保持可能 2:自分で足をわずかにずらし、30秒間保持可能 1:足を出すのに介助を要するが、15秒保持可能

0:足を出す時、または立位時にバランスを崩す

 

[観察のポイント]

タンデム立位、ステップなど歩行に近い要素を評価しています。両足が前後に分かれた際のバランスを見ています。左右を見ていくことが大切です。また、上肢は対側にしっかり降りているかなども評価のポイントです。

 

14)片脚立ち保持

指示:つかまらずにできる限り長く片足で立って下さい

4:自分で片足を挙げ、10秒間以上保持可能 3:自分で片足を挙げ、5~10秒間保持可能 2:自分で片足を挙げ3秒間以上保持可能 1:片足を挙げ3秒間保持不能であるが、自分で立位を保てる 0:検査施行困難、または転倒を防ぐための介助が必要

 

[観察のポイント]

最後は、より応用的な片脚支持での評価です。一側の足部上にしっかりとCOMが移せているか確認していきます。体幹の動揺、上肢の緊張が強まっていないかなど確認します。また、膝を曲げたり過度に突っ張ったりしていないかも評価ポイントです。

 

【まとめ】

今回、BBSを通して、量的な評価の中で、質的な部分はどのような所を見ていくのか確認しました。バランスや動作を見る際に重要なのは、まず静的な姿勢がどうなっているか確認することが大切です。「姿勢が動作の影のようについていく」といような言葉もあります。姿勢の左右差などが動作時の特徴として現れてきます。まずは、静的な姿勢を評価し様々なバランス評価や動作分析をすることをお勧めします。