リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

足を診ていますか?糖尿病の合併症とフットケア

はじめに

糖尿病とその合併症について、どのくらい知っていますか?

糖尿病の患者を担当したことがない、という理学療法士・作業療法士はほとんどいないと思います。それほど患者数が多く、リハビリテーションと関連が深い疾患です。

今、目の前にいる患者の糖尿病は、ただの合併症ではなく、リハビリテーションを必要とする状態を引き起こした原因疾患なのかもしれません。

さらに、その糖尿病は今後も別の疾患を引き起こす危険性を持っているかもしれません。

糖尿病患者のリハビリテーションでは、低血糖や感染症などの急性症状だけではなく、合併症を予防するための食事や運動、服薬管理やフットケアなど、長期的かつ予防的な観点が必要になります。

糖尿病は、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士など多職種による集学的な治療が行われます。その中で理学療法士・作業療法士に何ができるのか、考えてみたいと思います。

 

糖尿病の基礎的な知識を復習しよう!

そもそも糖尿病とは、体内のインスリンの働きが悪くなって慢性的に血糖値が高くなる疾患です。インスリンは筋肉や肝臓に作用し、体内でブドウ糖の利用を促進して血糖値を低下させます。

体内でインスリンの働きが悪くなる原因は、インスリンの分泌そのものが低下することと、筋肉や肝臓へのインスリンの作用が低下すること(インスリン抵抗性)の2つがあります。

膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞が破壊されて、インスリンの分泌が低下することで発症する糖尿病を1型といいます。

インスリンの分泌低下に加えて、インスリンの作用が低下して発症する糖尿病を2型といい、患者の多くは2型糖尿病であるといわれています。

平成28年の国民健康・栄養調査によると、糖尿病の患者数は予備群も含めると約2000万人といわれ、年齢が高くなるほど患者数は増加します。

血糖値が著しく高くなると、意識障害や体重減少といった急性症状がみられることがありますが、多くの場合は自覚症状がありません。しかし、糖尿病を治療せずに放置すると、さまざまな合併症が生じます。

糖尿病の治療目標は、血糖値を適切にコントロールして合併症を予防することです。血糖コントロールのためには、血糖値やHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)の定期的な測定が欠かせません。

血糖値の測定は、さまざまな簡易測定器が販売されており、インスリン治療をしていれば保険適応にもなるため、かなり手軽にできるようになっています。

HbA1cは過去1〜2か月間の血糖コントロールの状態を反映しているため、医療機関での定期的な測定が望まれます。

 

三大合併症だけではない!糖尿病の合併症とは?

糖尿病の合併症といえば、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害が三大合併症として有名です。これらの合併症は細い血管の血流障害によって生じるため、細小血管障害といわれます。

糖尿病網膜症は、眼底にある網膜の血管の出血や閉塞が原因となって視覚障害を生じます。初期にはほとんど自覚症状がありませんが、適切な治療をせずに進行すると失明する恐れがあります。

糖尿病網膜症は、失明の原因の第二位になっています。

糖尿病腎症は、腎臓にある糸球体の血流障害により、血液中の老廃物を濾過する機能が低下します。網膜症と同じように初期にはほとんど自覚症状がありませんが、腎臓の機能低下が進行すれば生命の維持にも支障をきたし、人工透析や腎臓移植が必要になります。

糖尿病腎症は、人工透析の原因の第一位になっています。

糖尿病神経障害は、末梢神経の血流障害により足のしびれや感覚鈍麻が生じます。感覚鈍麻により痛みを感じにくくなると、小さな傷をきっかけに足の病変につながることがあります。

神経障害は自律神経や脳神経にも及ぶことがあり、起立性低血圧や便秘などの自律神経症状、顔面筋の麻痺などの脳神経症状が生じることもあります。

さらに、糖尿病による血管の病変は細い血管だけではありません。

太い血管が高血糖状態によってダメージを受けると、動脈硬化による血流障害が生じます。これは大血管障害といわれ、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの重篤な合併症を引き起こす危険性があります。

これらの血管病変は、高血糖状態が続いて血管内壁にコレステロールが沈着しやすくなることで発生するため、合併症を予防するためには適切な血糖コントロールがきわめて重要になります。

血管病変以外の注意すべき合併症に感染症があります。

高血糖状態が続くと、免疫機能が低下して感染症にかかりやすくなります。感染症はインスリンの働きを悪くするため、糖尿病がさらに悪化して感染症が治りにくくなり、重症化しやすくなります。

2009年の新型インフルエンザ流行の際に、糖尿病患者が医学的ハイリスク者として優先的なワクチン接種の対象となったのは、このような理由があります。

 

下肢を切断!?恐ろしい足の病変とは?

糖尿病の重大な合併症のひとつに足の病変があります。

きっかけは小さな傷であったとしても、適切な治療がなされなければ壊疽になり、切断という最悪の事態に至ることもあります。

例えば、ちょっとした怪我、靴ずれ、深爪、低温やけど、水虫、魚の目、たこ(胼胝)といったものまで原因になる可能性があります。

神経障害を合併していると、痛みを感じにくいため傷ができやすく、気付かないうちに体重をかけてしまい傷が悪化してしまうこともあります。

網膜症により視力が低下していれば、少し見ただけでは傷に気付かないこともあるでしょう。

感染症にかかりやすいため、傷が化膿して治りにくく、悪化すれば潰瘍から壊疽になってしまいます。

このような事態を防ぐためには、毎日のフットケアがきわめて重要になります。

フットケアは患者が自己管理できるように指導しなければいけませんが、リハビリテーションを受けている患者では何らかの障害によって自己管理が難しい場合があります。

理学療法士・作業療法士は、医療職の中でも患者の体を直接的に見たり触ったりする機会が多いため、足の病変を早期発見できる立場にあります。

フットケアのポイントは患者も療法士も共通しているので、しっかりと押さえておきましょう。

・血糖値を適切にコントロールしましょう!
糖尿病の治療の基本です。足の病変だけでなく、さまざまな合併症の予防につながります。

・毎日、足の皮膚状態や傷の有無を確認しましょう!
療法士が確認するだけではなく、患者自身でも確認できるように支援しましょう。

・傷の原因となる生活習慣を見直しましょう¡!
例えば、靴のサイズ、爪の切り方、湯たんぽなどの暖房器具の使い方、魚の目やたこの処置など。

・足を清潔にしましょう!
水虫などの皮膚疾患や傷口からの感染のリスクを減らしましょう。

・傷を発見したら早期に受診しましょう!
傷が小さく痛みを感じないからといって軽く考えず、早めに適切な治療を受けて重症化を防ぎましょう。

足の病変は、閉塞性動脈硬化症による下肢の血流障害も原因のひとつです。そのような場合は、心臓や脳の血管にも動脈硬化が進行している可能性を考慮することも必要になります。

 

まとめ

糖尿病の患者にとって、血糖コントロールやフットケアは日常生活のひとつですが、一歩間違えば重大な結果を招く危険性があります。

受身的な治療態度では、合併症を予防することは難しいでしょう。

治療やケアを日常生活に組み込む生活の自律を目指すリハビリテーションの立場からは、患者と治療者が同じ知識を持ち、同じ目標に向かって治療を進めることで、治療やケアを日常生活に組み込むことが必要になります。

患者の生活の自律を支援できるように、正しい知識を身につけましょう。

(参考文献)
門脇孝:改訂版 やさしい糖尿病教室.医療ジャーナル社,2011.
後藤千秋:これだけは知っておきたい 糖尿病合併症の知識.医療ジャーナル社,2003.
河野茂夫:新フットケア よもやま噺.月刊糖尿病ライフさかえ,Vol53,No8,日本糖尿病協会,2013.