リハラボ

知っておくと役に立つリハビリの知識を紹介

リハビリを進める上で大切なバランス評価

はじめに

歩行練習時に対象者がふらつき、「転倒しそう!」とヒヤっとした経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
そのようなケースでは、立位バランスの低下を疑い、評価の一つとしてバランス評価を選択するかもしれません。
バランス評価には、いくつかの種類があり、評価によって目的も異なります。
今回は、リハビリを進める上で重要になるバランス評価についてご紹介していきたいと思います。

 

バランスとは 

バランスとは通常、支持基底面の変更の有無から、静的な姿勢保持と動的な要素に分類されます。静的な姿勢保持は、重心動揺測定装置を用いた定量的な測定法を用いられることが多いです。動的なものは、平行機能以外の運動要素を含めたバランスの障害をとらえることが多く、より複雑になります1)。

 

バランス評価の種類

バランスの評価指標は、検査が単一課題(single task)か複数の課題(multi task)かに分けられます。単一課題は特異的な機能をとらえるのに対し、複数課題は総体的な機能をとらえるものです。臨床でよく使われているバランス評価指標をご紹介します。
 
1)単一課題
■Functional reach test(FR)
臨床において、特別な機器を用いず簡便に行える評価としてよく用いられています。測定方法は、静止立位から一側の上肢を床面と平行にできるだけ遠くに手を伸ばし、開始姿勢から最終姿勢の変化を距離(㎝)で表示します。随意的に上肢を動かす際のバランスを評価します。
基準値2)は、20~40歳の男性で42.4(27.4~47.8)㎝、女性で37.1(26.2~48.8)㎝、41~69歳の男性で37.8㎝(23.6~49.0)㎝、女性で35.1(21.6~44.5)㎝、70~97歳の男性では33.5(24.9~39.4)㎝、女性で26.7(4.3~38.9)㎝とされています。高齢者では、到達距離が15.3㎝未満で転倒のリスクが高まると報告されています。
 
■Timed “Up and Go”test(TUG)
医療、介護の現場で、主に高齢者の立位や歩行における動的バランス能力の評価としてよく用いられています。測定は、肘掛け付きの椅子から立ち上がり、3m先の目標物まで歩き、目標物を回って椅子に腰かけるまでの一連の動作に要する時間を計測します。歩行速度は、快適速度や最大速度で行います。転倒予測のカットオフ値は、13.5秒であると報告されています3)。TUGは運動器不安定症の診断基準の一つで、11秒未満でリスクが高まるとされています。
 
■開眼片脚立位テスト
開眼片脚立位はTUGとともに運動器不安定症の診断基準の一つとされています。また、狭い場所でも行えるため高齢者のバランス能力を測定する指標として、介護、医療の場面でよく使われています。測定方法は、両手を腰にあて片脚を5㎝以上あげている時間を測定します。上げた足が、床に付いたときや支持脚の足部がずれた場合はその時点で測定は終了になります。開眼片脚立ち時間が、15秒未満で運動器不安定症のリスクが高まり5秒以内の者は転倒ハイリスク者とされています4)。
 
■four square step test(FSST)
FSSTは、高齢者のバランス評価指標として用いられ、転倒との関連性も報告されています。杖などを十字に並べ4区画に分けておき、対象者は4つの区画をラインに触れることなく、できるだけ早く1の区画から各領域に両足が接地するように2,3,4,1,4,3,2,1と移動する時間を測定します。
FSST が15秒以上だと、転倒のリスクが高いとされています 5)。この指標は,TUGやFRなどの評価との有意な相関が報告されています5)。
 
 
2)複数課題
■Functional Balance scale(FBS)(※Berg Balance scale(BBS)ともいわれる)
総合的なバランスの指標ですが、高価で専門的な機器を必要としないため臨床でよく使われています。評価内容は、日常必要とされる動作が中心となっており、14の項目から構成されています。評定の方法は、課題の遂行状況によって0~4を選択しますが、最も機能が良好だと56点になります。45点以下は、転倒の発生率が高いとされています6)。

 

バランス評価を行う際の注意点

バランスを評価する際には、基準値を参考にすることはもちろんですが、経時的な変化を捉えることも大切です。リハ開始時や1か月後、3か月後など、定期的にバランス評価を行いましょう。バランス評価を行う際には、正しい測定方法で行い結果の信頼性を高めることが必要です。評価の際の声掛けの仕方や椅子の高さなどは毎回統一し、再現性のある評価を心がけます。
また、バランス能力に影響を与える機能障害を捉えておく必要があります。例えば、膝関節に強い痛みがあるケースでは、TUGを行う際に立ち座りに時間を要するかもしれません。また、FRでは肩関節や体幹の可動性が低下しているケースでは遠くまで手を伸ばせないかもしれません。
FBSでは、複数の課題のうち低下している課題を把握い、アプローチ法を検討します。バランス能力の評価では、転倒リスクが高いものもあるので、測定中に転倒しないよう、リスク管理に気をつけて実施しましょう。

 

さいごに 

対象者の動作遂行の自立度を決める際、バランス能力評価の結果をもとに判定すると良いでしょう。バランス評価の低下と一言でいっても、低下の原因は様々です。そのため、原因を明らかにし、問題点を整理することで適切なアプローチを行うことができます。臨床場面でバランス評価を上手くとり入れてみましょう。
 
1)内山靖,小林武,潮見泰藏:臨床評価指標入門 適用と解釈のポイント.協同医書出版社,95-114,東京, 2003. 
2)内山靖,臼田滋,他:理学療法における標準(値)6.平行機能. PTジャーナル,32:949-959,1998.
3) Shumway-Cook A,Brauer S et.al: Predicting the probability for falls in community-dwelling older adults using the Timed Up & Go test. Phy Ther 80: 896-903, 2000.
4) Rockwood K, Awalt E, Carver D, et al.: Feasibility and measurement properties of the functional reach and the timed up and go tests in the Canadian study of health and aging. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 55: 70-73, 2000.
5)Dite W, Temple VA, DITE, W: A clinical test of stepping and change of direction to identify multiple falling older adults. Arch Phys Med Rehabil 83: 1566-1571, 2002. 
6)Berg KO et al: Measuring balance in the elderly: preliminary development of an instrument. Physiother Can 41: 304-311, 1989.