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家族が認知症になったら…覚えておきたいコミュニケーションの工夫

家族が認知症になってしまったら…。そんな想像をしたことはあるでしょうか?今や認知症はだれにでも起こりうる症状で、いつ身近な方が認知症になるかわかりません。そのためにできること。それはしっかりコミュニケーションの方法を知っておくことです。今回は、だれでも実践できる、認知症の方への対応法を紹介します。

 

なぜ大事になの?正しいコミュニケーションは認知症の症状悪化を防ぐ特効薬

身近な人が認知症になった場合はどのように対応しますか?

 

唐突に言われて、まず思い浮かぶのは「認知症治療の薬を飲む」ことではないでしょうか。

 

もちろん、認知症に対する薬は色々開発されています。

 

しかし、今のところ認知症を治す治療薬は開発されていません。

 

そのため、認知症は症状の悪化を防ぐことが重要で、それができるのは薬だけではないのです。

 

では、何が有効なのか…

 

それが、今回のテーマでもある、「コミュニケーション」なのです。

 

認知症になったといっても、人としてこれまで長い年月をかけて体験したり、学んだりしたことはどこかに残っています。

 

そのため、認知症になって物忘れがひどいからといって、心を傷つけるような言葉ばかり使ってしまうと、認知症の症状が悪化してしまいます。

 

逆に、適切なコミュニケーションを行うことで、認知症で記憶力の低下したり、日時の理解が困難になったりしても、徘徊や妄想などの症状(行動・心理症状と言います)を減らすことができます。

 

そこで、今回は家族が認知症になった場合に、すぐに実践できるコミュニケーション方法をお伝えしたいと思います。

 

言葉だけではない!?認知症に対するコミュニケーションの基本に身につけよう

コミュニケーションといったら何を思い浮かびますか?

 

真っ先に思い浮かぶのは「言葉」を使ったコミュニケーションではないでしょうか。

 

もちろん、言葉の使い方は大事です。

 

しかし、いかに言葉巧みに話をしても、認知症の方にとってはうまく伝わらなかったり、症状が悪化したりしてしまう場合があります。

 

以下に、言葉以前のコミュニケーションのポイントを挙げてみます。

 

◯笑顔で接する

◯相手の言葉をしっかり聞く(うなずきや相づちを打つ)

◯共感(相手の気持ちを理解しようとする)の気持ちを持つ

 

以上のようなポイントをしっかり抑えることは、たとえうまく言葉で伝えられなくても、認知症の方にとっては、安心感を与える立派なコミュニケーションの方法です。

 

特に認知症が重度になった場合でも、表情や視線、姿勢、雰囲気といった言語以外のコミュニケーション(非言語コミュニケーション)を感じる能力は比較的保たれるとされています。

 

そのため、しっかりと非言語コミュニケーションの重要性を理解して、身につけておくことは、認知症に対するコミュニケーションとして大切なのです。

 

次に、言葉でのコミュニケーションの基本的なポイントも挙げておきましょう。

 

◯相手の言ったことを反復する

◯批判をしないようにする

◯沈黙を大切にする

◯行動や感情を褒める

 

実は、ここであげたコミュニケーションのポイントは「傾聴」と呼ばれるコミュニケーションの手法におけるポイントです。

 

まずは、紹介してコミュニケーションの基本をしっかり押さえて、対応できるようにしましょう。

 

認知症を一括りにして同じ対応をするのは逆効果?原因によって使い分けるコミュニケーションのポイント

コミュニケーションの基本を学んだので、もう家族が認知症になったとしてもバッチリだと言うと、残念ながらそうではありません。

 

もう少し、具体的なコミュニケーション方法を身につけるためには、認知症の原因となっている脳の病気にごとに、コミュニケーションのポイントを知る必要があるのです。

 

「認知症自体が病気じゃないの?」

 

という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「認知症」というのは、あくまで症状の一つで、認知症を引き起こす病気自体があるのです。

 

代表的なものに次の病気があります。

◯アルツハイマー病

◯脳血管障害(いわゆる脳梗塞や脳出血)

◯レビー小体病

◯前頭側頭葉変性症(ぜんとうそくとうようへんせいしょう)

 

以上のように認知症を引き起こす病気が様々であるということは、それぞれの病気による認知症の症状が違います。

 

ここでは、代表的な病気別にコミュニケーションの注意点を紹介します。

 

認知症の中で最も多いアルツハイマー病のコミュニケーション方法

アルツハイマー病は認知症の原因の約60%を占めるとされています。

 

そのため、最も多くの人が思い浮かぶ認知症の症状に当てはまるのが、アルツハイマー病の症状です。

 

今していたことを忘れたり、今まで行えていたことが急にできなくなったりします。

 

また、そのような認知症の症状があることに対し、認識できず「自分はまだまだしっかりしているよ」と取り繕うことも特徴的です。

 

そのような場合に、「さっきまでしていたでしょう」「そんな簡単なこともできないの」と否定的な言葉は決してしてはいけません。

 

話を傾聴しながら、一旦動作を仕切り直して、本人のペースに合わせながら、一緒に動作をおこなっていくようにしましょう。

 

感情の起伏が激しいのはコミュニケーションのせい!?脳血管障害による認知症のコミュニケーション方法

脳血管障害で起こる認知症は、意欲が低下したり、急に怒り出したりといった感情の起伏が激しくなるという特徴があります。

しかし、何もないのに急に怒り出すというよりは、きっかけとなることが依存でいる場合も多く、適切なコミュニケーションをとることが大切です。

 

アルツハイマー病に比べ、記憶などは比較的保たれているため、一見できないことも少ないように思えますが、脳の障害部位により動作が難しくなっており、できそうでできないといったこともあります。

 

そんな時に、家族が全て手伝ってしまったり、何気なく否定的な声かけをしたりしてしまうと、感情のスイッチが入ってしまい、急に怒り出してしますのです。

 

本人様のペースに合わせる、否定しないといったコミュニケーションの基本が重要になります。

 

また、意欲の低下がある場合は、病気になる前に好きだった話題などを行い、少しでも意欲を引き出す刺激になるようなコミュニケーションをとることが重要になります。

 

見えないものが見える…。レビー小体病のコミュニケーション方法

レビー小体病という名前はあまり聞きなれないかもしれませんが、認知症の原因の約20%を占めるとされている病気です。

 

体が固くなったり、歩く時に足が前に出にくくなったりするような、体の症状が出現するという特徴がありますが、その最大の特徴は幻視と呼ばれる、見えないものがまるでその場にあるように見える症状です。

 

レビー小体病の場合は、「小さな子供がそこに立っている」というように、リアルな幻視が現れます。

 

その際のポイントは頭ごなしに否定しないのはもちろんですが、訴えに対して完全に同調するのも、いい対応ではありません。

 

同調することで、幻視がよりリアルなものとして認識されてしまうのです。

 

そのため、うまく話をそらして、違う話題に変えるというような対応がオススメです。

 

反社会的な行動をすることも…。前頭側頭葉変性症における認知症に対するコミュニケーション方法

 

具体例でしっかりおさらい!認知症コミュニケーションの実践例

認知症に対するコミュニケーションを学んだところで、具体例を交えておさらいしていきたいと思います。

 

「自分だったらどのような声かけをするだろうか…」

 

と想像しながら、参考にしてみてください。

 

具体例「あるアルツハイマー病の女性の場合」

物忘れがひどくなってきたAさんは、料理をしたことを忘れ、一日に何度も冷蔵庫の中身を出して調理をしようとするという行為がありました。

 

そこで、家族は「さっき料理して、ご飯を食べたでしょう」といって、繰り返し、説得しようとしました。

 

そうすると、Aさんは「あなたは私にご飯もたべさせないつもり」といって、家族に強く当たったり、無理やり冷蔵庫の中身を取り出したりとしてしまい、家族も困惑してしまいました。
 

以上のような場合は、基本に立ち返って、話を傾聴していくことが重要です。

そして、次のような声掛けを行いましょう。

 

「料理が好きなのね」「何が作りたいの?」「一緒に作りたいから夕方まで待ってくれる?」「いつも料理してくれてありがとう」

 

例に挙げた声掛けに共通するのは、否定的な言葉を使わず、料理を作りたいという本人の気持ちによりそって考えた声掛けです。

 

例に挙げた声掛けが必ずしも正解というわけではありません。あくまでも、コミュニケーションにおける考え方の参考にしてみてください。

 

いつまでも一緒に暮したい…。認知症を理解して、そんな思いを形にしましょう!

いくら技術があっても認知症の家族と一緒に暮らすことは非常に体力や精神力が必要になります。

 

しかし、ただ闇雲にコミュニケーションをとるだけでは、認知症の症状を悪化させ、認知症である本人も家族も負担が大きくなります。

 

そのため、基本的なコミュニケーションの知識を知り、対応をすることで、その負担を少しでも減らしていきましょう。

 

とはいうものの、常に完璧は無理なこと。認知症の家族を支援するサービスは数多くありますので、うまく活用しながら息抜きもするようにしてください。