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「下半身の要をどう鍛えるか?中臀筋のリハビリとケアの方法」

はじめに

「中臀筋」はその名の通り臀部に存在する筋肉です。
正しい歩行動作を行ったり、股関節を安定させるためにとても重要な働きをしており、下半身の要とも言える筋肉ですが、その存在はあまり知られていません。
そこで今回は、「中臀筋」について働きとその重要性、トレーニングやケアの方法を詳しくご紹介します。

 

中臀筋の機能とは?

■中臀筋とは?
中臀筋はお尻の外側の面についている筋肉で、正確にはウエストの下の骨盤の骨が触れられるライン(腸骨稜の外唇)から始まり、股関節外側で大腿骨の突起を触れられる部位(大転子)に着いている扇形の筋肉です。

■中臀筋の働き
中臀筋の主な働きは股関節を外転させる(膝を伸ばした状態で股関節を真横に広げる)ことです。
股関節を横に広げるというと大して重要な役割ではないように感じるかもしれませんが、私たちの日常生活とは切り離せないとても重要な働きを持っています。
歩行やランニング動作では左右の足が交互に片足立ちの状態になります。
片足立ちになると、机の足を一本抜かれたような状態になり、足を抜かれた側の上半身は傾いて倒れようとします。
身体が傾いた場合、地面に付いているほうの足の股関節は相対的に内転(外転の反対で内側に閉じる)する方向に動きます。
しかし、そのときに中臀筋が収縮して股関節を外転方向に引っ張ることで、身体が傾くことなくまっすぐに一本の足で立っていられるのです。

中臀筋の股関節外転作用は、スポーツ動作や高齢者の転倒予防にも重要な役割を持っています。
サッカーやバスケットボールなどで横に踏ん張る動きをするとき、また人やものにぶつかって不意に横方向へバランスを崩して倒れそうになったとき、体重がかかった方の足は横方向にぐっと踏ん張ります。
そのようなときに、転倒することなく踏ん張るために主に働いているのが中臀筋です。

このように、中殿筋は通常の歩行動作からバランスを崩すような不意の動作まで多くの場面で私たちの下半身を支えています。

 

中臀筋の鍛え方

中臀筋は下半身の強化を行う際には外せない筋肉ですので、その鍛え方をご紹介します。
ここでご紹介するトレーニングは負荷の程度も様々であり、変形性股関節症の方や大腿骨の骨折により股関節の手術を行った方はそれぞれの状態に応じたトレーニングが必要になります。
しっかりと担当の医師や理学療法士に確認をとって行うようにしてください。

■足上げ
最も基本的な中臀筋トレーニングです。股関節の外転作用をそのまま動きにしたトレーニングで荷重をかけない状態で行うものです。

1. 鍛える方の足が上になるように横向きに寝て、上から見た時に肩から足首までが一直線になるようにします。
2. 身体のラインが一直線であることを保ちながらゆっくりと上側になっている足を上げて股関節を外転させ、戻します。

・このとき、足を上げる高さには決まりはありませんが、勢いよく高く上げるとあまり効果がないので、ゆっくりと比較的小さな動きで行うのが効果的です。
・足を上げるときにつま先が外向きになり、股関節が外向きに捻られて(外旋)しまうと違う筋肉を使うことになりますので、つま先の向きは常に身体の正面を向くようにしてください。
・上半身がぐらぐらしないように床に手をついてもかまいませんが、それと同時に上半身が下を向いてしまわないように注意しましょう。
・筋力が弱い方やトレーニングに不慣れな方は足の重さのみを負荷にする形から始めて、慣れてきたら左右の足をつなぐように太ももの周りにゴムチューブなどを巻いてそれを伸ばすことを負荷にするとよいでしょう。

■片足立ち
荷重をかけて行うもので、きれいな片脚立ちをつくり正しい歩行につなげるトレーニングです。

1. 全身鏡など自分の姿が見える場所に立ち、両足で立っている状態から片方の足を浮かせて片足立ちになります。
2. このとき、骨盤や肩のラインが傾かないように、また骨盤が立っている足の方にスライドしてしまわないように注意します。

・まっすぐな地面で行うのもよいですが、低めの台を用意してそこに乗り込むように片足立ちの練習をするのも効果的です。

■サイドランジ
スポーツや転倒予防のトレーニングで行います。実際に踏ん張る動作の実践練習になります。

1. 両足で直立した状態から、鍛えたい方の足を横に一歩踏み出します。
2. 踏み出した方の足の股関節や膝関節をゆっくり曲げながらそちらの足に荷重を寄せていき、しっかりと体重がかかったら股関節や膝関節をゆっくりと伸ばしながら元の直立まで戻ります。

・中臀筋をしっかりと使うためには踏み出した方の足のつま先と膝の向きは直立状態での正面方向を維持するようにします。
・股関節と膝関節を曲げて重心を寄せていく際には、しっかりとお尻の外側に体重を乗せ、お尻の筋肉で踏ん張っている意識をします。
・高齢者などの転倒予防目的でこのトレーニングを行う場合は、踏み出す歩幅を小さくしたり、踏み込む量を軽くするなど負荷を調整し、しっかり踏ん張れるようになってから徐々に動きを大きくするようにしてください。

 

中臀筋のケア方法

どの筋肉でも同じですが、筋力トレーニングを行うとその筋肉は縮まる方向に繰り返し動くので特に負荷の強いトレーニング後は筋肉が硬くなったり、疲労物質が溜まったりしてしまいます。
そのような状態を改善するためには、ストレッチやマッサージなど筋肉を緩め、血流を促すようなケアが必要です。
ここでは、中臀筋のストレッチやマッサージの方法をご紹介しますので、質の良いしなやかな筋肉を作るために是非トレーニング前後などに行って下さい。

■ストレッチ
1.両足を伸ばした状態で仰向けに寝ます。
2.ストレッチする方の足の股関節、膝関節を曲げて反対の足の外側に持ってくるように股関節を捻ります。
このとき、上半身は横向きにならずしっかりと仰向けの状態を維持してください。
3. お尻の外側、中臀筋のあたりに伸張感を感じたらゆっくりと呼吸を続けながら20~30秒静止します。

このストレッチは股関節の内転・内旋(内側に捻る)を伴います。
変形性股関節症や大腿骨の骨折により股関節の手術を行った方は脱臼肢位として禁忌になりますので、行わないようにし次で説明するマッサージを行うようにしてください。

■マッサージ
1.両膝を立てた状態で仰向けに寝ます。
2.ほぐしたい側の股関節の外側にテニスボールまたは自分の拳を置き、両膝をそちら側に倒し、中臀筋にあたるようにします。
3.自分で痛すぎず気持ちよい程度になるようにボールや拳の上に体重をかけて、マッサージするように動きます。

 

おわりに

今回は、中臀筋についてその機能やトレーニング、ケアの方法をご紹介しました。
太ももの筋肉などに比べて、筋肉が落ちたことや発達したことを感じにくい筋肉ではありますが、健康な下半身を保つためにはとても重要な筋肉です。
今回ご紹介したトレーニングはもちろん、中臀筋の存在や機能を知り、歩行や踏ん張ったときなどちょっとしたときに意識するだけでも筋肉の使い方に変化があると思いますので、是非気にかけてみていただきたいと思います。