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肩腱板損傷

肩腱板損傷は肩の疾患でよくみられる疾患の1つです。

スポーツをしている若年者だけでなく、運動していない高齢者など幅広い年代でみられます。

肩に力が入らない」「腕が挙がらない」「動かすと痛い」という症状がある人は腱板損傷を疑った方がいいかもしれません。

今回は肩腱板損傷について解説していきます。

 

腱板とは

そもそも腱板とは何でしょうか?

腱板とは肩甲骨と上腕骨という腕の骨をつなげている筋肉です。

上腕骨は球状(上腕骨頭)、肩甲骨はお皿のような形(関節窩)になっています。

腱板は上腕骨頭を丸く包むように付着し、それぞれが共同して働き、この2つの骨を引き寄せ肩甲骨に安定させる機能があります。

この腱板は棘上筋棘下筋小円筋肩甲下筋と呼ばれる4つの筋肉で構成されています。

みなさんがよく「インナーマッスル」と言っている筋肉もこの腱板になります。

また肩甲下筋と棘上筋の間は烏口突起と呼ばれる骨の突起があり、この突起にさえぎられるように腱板がない部分があります。

この部分を腱板疎部といいます。

つまり腱板損傷とは、肩関節を安定させる腱板が損傷し、関節が不安定になったり、インナーマッスルとアウターマッスルのバランスが崩れた結果、痛みや筋力低下などの症状を呈している状態のことを言います。

 

腱板損傷の特徴

腱板損傷は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の腱板付着部での損傷と腱板疎部での損傷を含む疾患になります。
腱板損傷は不全断裂完全断裂に分類されます。

 

不全断裂は完全に断裂せずに腱の表層や関節面側の部分だけで断裂している状態です。

不全断裂の中では圧倒的に表層での断裂が多くなっています。

 

完全断裂はその断裂範囲で小範囲(1cm未満)、中等度(3cm未満)、広範囲断裂(5cm以上)に分類されています。

広範囲断裂は棘上筋を含む2つの腱の断裂のことを指し、修復にも難渋することがあります。

また自然経過として、断裂した腱板は自然治癒しないとされています。

むしろ自然経過で断裂部分が拡大する傾向があります。

ただ、腱板が断裂したからといって症状がでるかというとそういうわけではなく、無症候性の腱板損傷が存在することが分かってきています。

 

腱板損傷の発生要因は外傷によるものが大半を占めますが、加齢による変性やオーバーユースなどでも発症し、中年以降ではごくわずかな外力や外傷の既往がなくても発生することがあります。

 

非外傷性の原因は、加齢による腱板の退行変性に伴う脆弱化が原因とされています。

 

40~50歳になると棘上筋腱への血流が減少し特に棘上筋腱が骨頭に付着する部分は、骨や靭帯との間で摩擦が生じやすく、損傷しやすい部分と言われています。

そのため、棘上筋は他の3腱より圧倒的に損傷を生じやすいと言われています。

その逆に棘下筋や肩甲下筋は単独で断裂することは少なく、広範囲断裂の際に損傷します。

腱板疎部の損傷はオーバーヘッドアクション、つまり手を頭より高く上げた位置での動作を繰り返し行うことによるオーバーユースが原因です。

頭より高い位置で繰り返し回旋運動を行うことにより、腱板疎部に炎症が起こります。

症状が進むにつれ、二次的にゆるんでしまうため肩の不安定性を招くおそれがあります。

 

腱板断裂の症状

腱板断裂の症状は、

運動時や夜間に痛みがでる

自力で腕を持ち上げられない、固まって動かせない

腕に力が入らない

腕を動かすときに引っかかったり痛かったりする

などが挙げられます。

常に痛いわけではないので、五十肩などと思って診察が遅くなってしまう可能性もあります

不全断裂ではこのような症状を呈することは少なく、むしろ2次的に生じた腱板での炎症やや滑液包と呼ばれる腱板の滑りを良くする袋の炎症などによる痛みが主な症状になってきます。

夜間痛があると、夜寝ている時に疼いて寝れない、もしくは痛みが出て目が覚めてしまうなどが起こってきます。

原因は肩関節やその周囲の炎症などによる関節内の内圧の上昇と言われています。動かしたときの痛みは、特に腕を挙げるときや回旋するときに生じます。

また有痛弧(ゆうつうこ)と呼ばれるものがあり、腕を横から挙げていくときの最初と最後は痛みが出ず、中間域で痛みを訴えるのも特徴の1つです。

腕の自力での挙上障害は、患者さんによってその程度は様々であり、広範囲断裂でも著明な可動域制限を呈さないことがあります。

他力での可動域は最初は障害されることは少ないですが、治療をせずにそのまま放置した場合は関節が固まってしまっていることがあります

 

治療

腱板損傷の治療は断裂の大きさや症状によって違いますが、保存療法と手術療法があります。

 

①保存療法

よほどの大断裂でない限り、保存療法が第1選択となってきます。

安静、投薬、リハビリが主な内容になります。

 

●安静

腱板損傷受傷直後は痛み、炎症が強い場合もあります。

不全断裂の場合でも、使いすぎている場合が多いのでまずは使う量を減らしたりして、過度な負担を避けるようにしていく必要があります。

 

●投薬

腱板損傷は夜間痛や運動時痛など、痛みで悩んでいる方も多いです。

痛み止めの薬を上手に使用することによって少しでも痛みをコントロールすることが重要になってきます。

痛みがあまりにも強い場合は、麻酔ヒアルロン酸などの注射を行う場合もあります。

 

●リハビリ

リハビリで行っていくことは肩周囲の筋肉の柔軟性の維持肩周囲筋の筋力トレーニング、可動域制限がある場合の可動域練習、痛みのコントロールをするための姿勢の指導が主になってきます。

肩周りの筋肉は、特に肩甲骨周りの筋肉や首周りの筋肉マッサージやストレッチを行います。

筋力トレーニングは上記に挙げた腱板の4つの筋肉をトレーニングしていきます。ストレッチや筋力トレーニングは専門家に聞いて行うようにしましょう。

夜間痛を少しでも軽減させる方法として、クッションを腕の下に敷いて寝ることをお勧めします。

腕が下に落ち込むような姿勢になると痛みを誘発しやすいです。

外出時などもスリングなどを使用して、腕が体より後ろに行かないようにすると痛みも比較的楽になります。

②手術療法

保存療法で効果が無かったり、断裂が大きい場合は手術療法が行われます。

近年では関節鏡という小型の内視鏡を使用した手術が増えています。

以前のように大きな傷を切らずに、1cm程の小さな傷から関節鏡を入れ、モニターを見ながら断裂している腱板を縫合していきます。

術後はリハビリを行っていきますが、最初の数週間は装具で固定します。

その後、徐々に肩を動かす練習と筋力トレーニングを進めていくことになります。

固定期間やリハビリの進み方は各施設によって異なりますので、受診した医療機関に尋ねることをお勧めします。

 

まとめ

今回は肩腱板損傷について解説していきました。

腱板は、肩関節を安定させる機能を持っていますが、それが破綻した状態が腱板損傷です。

腱板損傷は身近な疾患ですが、無症候で気づかない人もいます。

腱板断裂になってしまっても必ず手術というわけではなく、保存的に治療して症状が軽快していく方もいらっしゃいます。

五十肩などと間違えやすいので、自分で判断せずに整形外科に受診して適切な指示を受けることが大事です。