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仙腸関節障害に対する疼痛誘発テストと治療

はじめに

仙腸関節は、動きは小さいが可動関節であり、臥位を除けば上体の重みを常に担っています。

さらに関節包および関節後方の靱帯領域に知覚神経終末の分布が確認されており、痛みの発痛源になります。

また、腰痛の原因として注目されている関節でもあります。

 今回は仙腸関節障害についてお話していきます。

 

仙腸関節の解剖

構造

仙腸関節は、平面関節で構成され、仙骨の耳状面と腸骨の耳状面によってつくられる関節です。

両関節面は軟骨をかぶり、両者の間に滑液を含んだ狭い関節腔が存在します。

関節面には凹凸があり、また関節包と強い靱帯によって包まれていることから、可動性としては1-8°(3-5㎜)しかありません。

 

靱帯

(1)前仙腸靱帯:関節包の前面にあって仙骨外側部の前面と腸骨の耳状面の辺縁につく。

(2)骨間仙腸靱帯:関節包の後方で、腸骨の腸骨粗面と仙骨の仙骨粗面とを結ぶ強い短い靱帯で、仙骨と腸骨の間を埋める。

(3)後仙腸靱帯:表層にあって腸骨と仙骨の後面を結ぶ。上部の繊維束は、ほぼ水平に横走して仙骨粗面と外側仙骨稜から腸骨粗面に走り、下部の繊維は斜め上方へ走って、外側仙骨稜と上後仙骨棘へ達する。

 

骨運動

仙腸関節には主動作筋が存在しないため、受動的な運動が行われます。

そのため、体幹や下肢の運動に付随して仙腸関節の運動が起こります。

運動は、前屈運動と後屈運動、上下移動および前後回旋の組み合わされた運動の2つに分類されます。

 

前屈運動:矢状面上の運動で、腸骨に対し仙骨がおじきするような動きです。

後屈運動:岬角が上方へ移動し、仙骨が後上方へ移動する運動になります。

上方移動・後方回旋:仙骨は反対方向に軽度回旋し、棘結節が同側へ移動して前屈運動が起こります。

下方移動・前方回旋:仙腸関節では、腸骨の下方移動、前方回旋および後屈運動がおこります。

 

仙腸関節障害と治療

疼痛の発現機序

仙腸関節は、後方を強靱な骨間仙腸靱帯および仙腸靱帯で結合されており、可動性が小さい。

また、その関節面は荷重線に対して垂直に近く、荷重に対して剪断力を生じやすい構造です。

よって中腰での作業や不用意な動作あるいは反復作業により、繰り返しの負荷で骨盤周囲の筋の協調運動に破綻が生じると、関節に微小なズレが生じます。

その結果、運動制限などの機能障害が起こり、痛みが発生します。

 

症状

多くの例では、仙腸関節裂隙の外縁部を中心とした痛み、鼠径部の痛み、大腿外側部から下肢に感覚領域に一致しない痺れや痛みを伴います。

日常生活においては、長時間座ってられない・歩行開始時に疼痛が出現し、しばらくすると疼痛が消失するといった症状がみうけられます。

 

評価、診断

評価には疼痛評価や整形外科テストを用い、総合的に診断していく必要があります。

・疼痛

疼痛の領域断定には、普段痛みを感じている部分を人差し指で示してもらうワンフィンガーテストが有用です。

しかし、疼痛域の決定には注意が必要です。

漠然と患者様が示す疼痛域に従うと、同定が不確定になります。

圧痛点:仙腸関節障害の疼痛は、上後腸骨棘の下方・内側、仙結節靱帯の圧痛が比較的多いです。

 

・画像所見

Xpでみられる仙腸関節部の骨硬化像と痛みの関連性は認められていません。

MRI検査は化膿性仙腸関節炎や関節周囲の腫瘍性変化の診断にはきわめて有用であるが、仙腸関節障害を示す特異的な所見はとらえにくいです。

CT検査では、骨・関節裂隙の変化を知るには有効であるが、関節性の変化の有無と症状との相関少ないです。

そのため、現在の画像検査では、仙腸関節の機能障害による疼痛に特異的な所見を得るのは困難です。

 

・疼痛誘発テスト

仙腸関節由来の疼痛を誘発する手技として、一般的なものにNewtonテスト・Gaenslenテスト・Patrickテストがあります。

 

Newtonテスト:検査方法は、腹臥位にて行います。仙腸関節に手掌の母指球をあて、外側下方に向けてゆっくりと圧迫を加えます。仙腸関節部の痛みが増強すれば、陽性と判断します。

 

Gaenslenテスト:検査方法は、背臥位にて行います。患者自身に良い方の下肢を抱えながら股関節を屈曲してもらいます。検者はベッドの端に位置し、患者の患側の大腿部を下方に圧迫します。仙腸関節やその周囲に痛みが増強すれば陽性と判断します。

 

Patrickテスト:検査方法は、背臥位にて行います。股関節を屈曲・外転・外旋させ、反対の膝に乗せます。その状態から下方に押してストレスを加えます。股関節に痛みが出現すれば陽性と判断します。

 

・診断の決め手
自覚疼痛部位、ワンフィンガーテスト、仙腸結節への疼痛誘発テストなどの結果から、仙腸関節由来の痛みを疑い、仙腸関節ブロックでの効果で最終的に診断を行います。

 

治療

基本的な治療としては、保存療法やブロック治療が選択されます。

日常生活上において、強い影響を及ぼす場合や疼痛が長期間継続した場合は、手術療法もあります。

 

・骨盤ゴムベルト

骨盤装具のような強固なものは不要で、腸骨稜より下方に骨盤ベルトを装着する事で、十分に効果を期待できます。

特にゴム製の帯状のベルトは締める強さを調節でき、かつ前締め・後締めができます。

どちらを選択するかは、実際に行い疼痛が軽減するほうを選択します。

また、経過によっては変えなければならない状況もあるため、適宜評価していく必要があります。

 

・ブロック療法

仙腸関節由来の痛みに対するブロック療法には、関節内ブロックと関節後方ブロックがあります。

関節内ブロックで針を関節腔内に刺入は決して容易ではありません。

一方、関節後方の靱帯領域へのブロックは針を仙骨と腸骨との間隙に刺入する手技は、X線透視を行えば確実に実施する事ができます。

 

・関節運動学的アプローチ

リハビリテーションで主に用いられる治療方法です。

仙腸関節に生じているズレを徒手的に改善させ、疼痛を緩和させる方法です。

不適合により、可動性が低下している場合が多くみうけられます。

そのため、疼痛に留意しつつ、仙腸関節の可動性を広げていきます。

また、仙腸関節由来ではあるが、原因が仙腸関節にない場合もあります。

そのため、仙腸関節の適合性を高めても、また機能障害を来し、繰り返してしまう場合もあるため、そのような例に対しては仙腸関節に関連する関節や筋にも注目しましょう。

 

・手術療法

多くは保存療法が有効であるが、その効果が持続しないために日常生活や仕事可動性に著しい障害を生じる方も中には居ます。

長期の保存療法が無効な患者様に仙腸関節の固定術が適応となります。

関節固定術には、前方固定術と後方固定術があります。

 

後方固定術は、直視下で、腸骨を破壊する事なく関節腔のみの操作が困難なために広範な関節の癒合を得にくい。

 

一方、前方固定術では、荷重が最もかかる関節の上・中部を直視下に深部まで骨移植ができるため、広範囲の骨癒合が期待できます。

 

おわりに

仙腸関節障害は、老若男女関係なく誰にでも引き起こす可能性のある障害です。

疼痛や痺れにより、日常生活や仕事に強く影響してしまう場合が多いため、しっかりと治療を行い、安楽に生活・仕事ができるようにしていきましょう。

 

参考文献

仙腸関節由来の腰痛 村上栄一日本腰痛会誌 13(1):40-47 2007 

標準理学療法学 解剖学 

仙腸関節障害について 日本仙腸関節研究会