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腰椎椎間板ヘルニアの基礎と理学療法

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はじめに

理学療法士をしていれば避けて通れない症状の一つが『腰痛』です。

厚生労働省が調査した2013年のデータによると、腰痛は国民の自覚症状ランキングの第1位に輝きその割合は国民全体の9%に昇るといわれます。

現在その腰痛の8割程度が非特異性腰痛(「原因がよくわからない」ものの「心配する異常や病気 のない」「危険ではない」)腰痛であるといわれています。

その一方残りの約20%は『特異性腰痛』と呼ばれる画像診断などで原因が特定できる腰痛で神経症状など重篤なものも多いです。

そんな特異性腰痛の原因として有名なのが、『腰椎椎間板ヘルニア』です。

緊急性や理学療法を適切に進めていくためには病態の整理と他の腰痛との鑑別できることが非常に重要になってきます。

今回はそんな代表的な疾患についての基本的な基礎知識と一般的な理学療法についてご説明していきたいと思います。

 

腰椎椎間板ヘルニアの基礎知識

病態

腰椎椎間板ヘルニアは椎間板の退行性変化の中で生じる代表的な疾患です。

腰椎の椎間板の髄核(クッションの部分)が何らかの原因により後方の繊維輪を部分的あるいは完全に突き破り椎間板の組織が脊柱管内に突出あるいは脱出することを指します。

飛び出した神経根は神経根などを圧迫し、神経症状を引き起こします。

好発部位はL4-5、L5-S1間で多いといわれており全体の90%以上とも言われています。

 

症状

腰椎椎間板ヘルニアは特に症状のない無痛のものから膀胱直腸障害まで多岐にわたります。
基本的には神経症状ですので、圧迫されている神経の部位、圧迫のされ方によって症状などは変化します。

以下は腰椎ヘルニアによる神経圧迫の分類で特に遭遇するケースが多いパターンと特に多いとされるL4-5、L5-S1の代表的な症状です。

①傍正中ヘルニア

全体の80%とも言われ、ほとんどの人がこのタイプのヘルニアに分類されます。

椎間板の真後ろは後縦靭帯がある為、その少し横から髄核が飛び出すケースです。
この場合圧迫される部位はL4-L5レベルではL5神経根が、L5-S1ではS1の神経根が障害されることになります。

後にご紹介する外側ヘルニアのように構造上、強い痛みを呈するものでではないことが多く疼痛は自制内であることが多いといわれていますので症状がない、または強くない場合は保存療法が選択される場合が多いです。

②正中ヘルニア

ヘルニアの種類の中では2番目に多いタイプです。

先ほどの傍正中ヘルニアでも説明しましたが本来は椎間板の後方にある後縦靭帯がガードしているのですが、このタイプはその後縦靭帯ごと後方へ押し込むような形になったタイプを言います。

正中ヘルニアの場合は繊維輪を介して脊柱管が狭窄するため、脊柱管狭窄症と同様、馬尾神経障害、膀胱直腸障害をきたしやすく、その場合は手術の適応となる状態です。

③椎間孔内外側ヘルニア

ケースとしては少ないものの、最も神経根症状が強いタイプのヘルニアで患者さんは日常生活を阻害する痛みや、痺れ、筋力低下に苦しめられます。

髄核が傍正中ヘルニアよりも外側に飛び出した状態で神経根を圧迫します。
症状として感覚障害(痺れ)や筋力低下などの神経根症状、また神経が炎症している場合は患部の激しい痛みもあります。

傍正中ヘルニアと異なり、L4-L5の場合はL4の神経根が圧迫、L5-S1の場合はL5の神経根症状となります。

このヘルニアは傍正中ヘルニアと同様吸収されやすいですが、痛みが強い為手術を適応されることもあります。

そのほかにもヘルニアのタイプには種類が何パターンかありますので、画像所見をチェックする際はこのようなパターンに注目し、症状の予測や予後についての参考にしていきましょう。

 

原因

そんな腰椎椎間板ヘルニアになる原因はどのようなことなのでしょうか?患者さんへの生活指導の部分で重要な項目になるので抑えておきましょう。

・概要

椎間板ヘルニアの直接の発生起点は不明な点が多いのが現状ですが、発症の要因となる椎間板変性については遺伝的要素や加齢、肥満、喫煙、スポーツによる力学的負荷など様々な要因が関係するといわれています。

・椎間板へのストレス

原因ははっきりとしていないため、髄核が飛び出す要因は椎間内圧の高まりです。
椎間内圧が高まる姿勢の順番として有名なものでは

① 座位前屈
② 立位前屈
③ 座位
④ 立位
⑤ 側臥位
⑥ 背臥位

となっています。近年はデスクワークやPCの操作など社会情勢として椎間を圧迫する姿勢をとる機会が増えているということも症例が増加している要因と言えるかもしれませんね。

 

 腰椎椎間板ヘルニアの治療

診断基準 

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインでは主に以下の5つの診断基準を提唱しています。

①腰痛、下肢痛を呈する(主に片側ないし片側優位)

②安静時にも症状を呈する。

③SLRテスト70°以下で陽性(ただし高齢者では絶対ではない)

④MRI所見などで椎間板の突出が見られ、脊柱管狭窄症状を合併していない。

⑤症状と画像所見が一致する。

細かい問診内容や診断基準などは「腰椎椎間板ヘルニアガイドライン」というものがインターネット上でも閲覧できる為チェックしてみましょう。

 

保存療法

原因ははっきりとはしませんが症状の部分でも少し触れましたがヘルニア自体はおおよそ3か月間程度で自然治癒することが知られています。

その為、腰椎ヘルニアの治療として最も選択されやすいのがこの保存療法です。

具体的には薬物療法・ブロック注射なので痛みを抑えるもの、コルセットでの固定で痛みの出ない位置に矯正し、安静に持っていきます。

リハビリテーションも保存療法として重要な位置付けで、疼痛姿勢を回避するような姿勢、運動指導や、痛みにより2次的な筋力低下などを起こさないような生活指導などが特に重要になってきます。

 

手術治療

神経症状や痛みが強く日常生活を阻害する要因が大きい場合は手術適応となります。腰椎椎間板ヘルニアの手術の代表的なものとしては

①直接切開し、ヘルニアを摘出するヘルニア切除術、②ヘルニアの一部を摘出し、内圧を軽減する経皮的髄核切除術 ③レーザーにより髄核を除去するものなど多岐にわたります。

最もポピュラーなものは①の直接的ヘルニア切除術です。

 

腰椎椎間板ヘルニアの理学療法

・筋力と姿勢

原因の部分でも軽く触れましたが、体が前屈位になることにより症状が悪化する傾向があります。
理学療法士として介入する際、患者さんに腰椎の後弯、骨盤後傾位が顕著に見られた場合はこの姿勢を改善するためのアプローチを行っていく必要が有ります。

骨盤が後傾位になる原因としては筋の要素でシンプルに考えると骨盤を前傾する筋肉の弱化(腸腰筋、脊柱起立筋、大腿直筋)または後傾に作用する筋肉(大臀筋・ハムストリングスなど)が原因の一つと考えられますので過緊張になっているところは緩める方向、収縮を促したい筋肉は増強という方針でリラクゼーションや運動療法アプローチを行っていくのが一般的です。

・ADL

原因で述べた日常生活の習慣が、ヘルニアの機序に大きく左右しているといわれています。普段の生活スタイルや状況を聴取しデスクワークの際の指導や普段の運動習慣に関しても指導を行っていきましょう。

 

最後に

いかがだったでしょうか。腰椎椎間板ヘルニアを持った患者さんを見る上で重要なことはこのような基本的な情報を把握し、腰痛をしっかりと鑑別しながらアプローチを行っていくことです。

基本的にヘルニアが原因で日常生活に大きく原因を与えるのが感覚障害や筋力低下などの神経根症状や馬尾神経障害です。よく腰が痛い時に「ヘルニア持ちだから仕方ないよね・・・」という言葉を聞きますが、日常の腰痛はすべてヘルニアが原因とも限りません。

姿勢の問題や日常生活などから筋・筋膜性の腰痛などの鑑別をしっかりと行っていきましょう。